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COLUMN

FDEとAXの違いとは?業務を変えるAXと、現場・データ・システムをつなぐFDE

FDEとAXの違いとは?

AXは「AIを使って業務や組織をどう変革するか」という方向性であり、FDEは顧客の現場に入り、目的達成のために業務・データ・システムをつなぎ、実装まで担う役割です。FDEがAXを実現する手段になることはありますが、両者は同じものでも、必ずFDEからAXへ進むものでもありません。

※本記事には、当社の実務経験に基づく個人的な見解を含みます。

FDEとAXの違いとは

AX(AI Transformation)は、AIを前提に業務プロセス、意思決定、組織、ビジネスモデルなどを変えていく考え方として使われています。

FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客の現場に深く入り、課題の発見から設計、実装、本番導入、改善までを担う役割です。つまり、AXが「どんな変革を目指すか」に近い概念なのに対し、FDEは「どう現場で実現するか」に近い存在です。

AXFDE
位置づけ変革の方向性・考え方実装を担う役割・アプローチ
中心AIを前提に業務や組織を再設計する顧客課題を理解し、必要な仕組みを作る
対象業務、判断、組織、事業モデル現場業務、データ、システム、運用
ゴール事業成果・アウトカム

個人的には、FDEは「業務を全部変える」ことが目的ではない

AXという言葉からは、AIを起点に業務そのものを大きく作り直す、比較的ドラスティックな変革をイメージします。

一方で、FDEで常にそこまで大きな変革を目指す必要はないと考えています。むしろ最初にやるべきことは、今すでに会社の中に存在している業務や情報を理解し、散らばっているものをつなぎ、目的に使える状態にすることです。

FDEは変革そのものではなく、目的を達成するための手段です。大きく変える必要があるなら変える。既存オペレーションを残した方がいいなら残す。その判断自体も、目的から逆算すべきだと思っています。

会社には「データになる前の情報」が大量に散らばっている

企業には、本来であれば経営資産になり得る情報が大量に存在します。

  • チャットでのやり取り
  • 営業担当者が頭の中に持っている顧客情報
  • 会議で決まった判断
  • 店舗で起きていること
  • 顧客から直接聞いた声
  • Excelやスプレッドシートに個別保存された数字
  • 会計・人事・営業など、別々のシステムに存在するデータ

これらは「情報」ではありますが、つながっていなければ分析や意思決定に使える「資産」にはなりません。

データを集めること自体を目的にしない

従来はBIツールやデータ基盤を導入し、まず情報を一つの場所へ集約するアプローチがよく取られてきました。もちろん、基盤を作ること自体には価値があります。

ただ、闇雲にデータを集めても、そのデータを何に使うのかが決まっていなければ意味がありません。

順番は「どのデータを集めるか」ではなく、「何をしたいか」→「そのために何を知る必要があるか」→「必要なデータは何か」→「どう取得するか」だと考えています。

その最後の「どう取得し、どうつなぐか」を現場まで入り込んで実装できるのが、FDEの強みの一つです。

汎用BIだけでは拾えない情報がある

汎用的なBIツールは便利ですが、当然ながら、入力されていない情報は扱えません。業界専用のツールであれば、その業界で一般的なデータ構造に最適化されています。

しかし、実際の会社には、業界の標準データだけでは説明できない情報があります。

例えばEC事業者でも、オンラインだけで完結しているとは限りません。実店舗、イベント、電話、法人取引、SNS、物流、商品開発など、顧客や事業に関する情報は複数の場所に散らばっています。

FDEは、特定のツールに合わせて企業を見るのではなく、その企業の目的から必要な情報を逆算し、複数の業務やシステムをまたいでつなぐことができます。

スーパーの例:来店手段までデータにすると戦略が変わる

極端な例ですが、スーパーを考えてみます。

通常はPOSデータ、オンラインショッピングの購買データ、会員データなどを分析するでしょう。しかし、自社で目的に合わせて情報基盤を作るのであれば、「来店者が徒歩なのか、自転車なのか、車なのか」といった周辺情報まで取得対象にできます。

もちろん、こうした来店手段の情報はPOSだけでは取得できません。実現するには、例えば駐車場の入出庫センサーやカメラ解析、駐輪場の利用状況、店舗入口の人数カウント、時間帯別の来店データなど、IoTや画像解析を含む複数の情報源を組み合わせる必要があります。

重要なのは、いきなり大規模なIoT基盤を作ることではありません。「来店手段と購買傾向の関係を知りたい」という目的を先に置き、その仮説検証に必要な最小限のデータから取得することです。例えば駐車場の入庫台数とPOSの時間帯別購買データを組み合わせるだけでも、まずは車来店の比率や購買傾向について一定の仮説を立てられます。必要性が確認できてから、カメラ解析や追加センサーへ広げる方が現実的です。

仮に徒歩や自転車で来る顧客が多いのであれば、近隣住民が多いという仮説を立てられます。すると、購入後すぐに持ち帰って食べる商品、日常使いの商品、頻繁に来店する前提の商品構成が有効かもしれません。

逆に車で遠方から来る顧客が中心なら、まとめ買いや保存性、車で持ち帰りやすい商品など、別の戦略が考えられます。

重要なのは、この例の「徒歩か車か」という指標そのものではありません。従来のシステムに存在しない情報でも、経営上の問いから逆算すれば、取得すべきデータとして設計できるということです。

FDEが、AXを実現する手段になることもある

既存の業務や情報をつなぎ、会社全体の状態が見えるようになると、初めて「この業務はAI前提で作り直した方がいい」という判断ができることがあります。

その意味では、FDEが現場・データ・システムをつなぐ過程で、「この業務はAIを前提に再設計した方が成果につながる」と判断できれば、FDEがAXを実現するための手段になることもあります。FDEからAXへ進むことが一般的な順序だという意味ではありません。

ただし、必ずAXへ進む必要があるわけではありません。今の業務を少しつなぐだけで十分な成果が出るのであれば、それが最適解です。

BLP型FDEという考え方

BLPでは、経営者に近い位置で会社全体の目的・業務・データ・システムを俯瞰し、必要に応じて専門家や外部パートナーを巻き込みながら、課題発見から実装・定着までをつなぐFDEモデルを「BLP型FDE」と定義しています。特定のAIやシステムを売るのではなく、目的に対して最適な手段を選び、アウトカムに責任を持つことを重視します。

なぜBLP型FDEは中小企業と相性が良いと考えるのか

会社の活動は、会計、財務、営業、マーケティング、採用、業務などが独立して存在しているわけではありません。すべてつながっています。

例えば広告宣伝費を増やしたいが資金繰りが厳しい場合、財務だけを見れば「資金が足りない」という話です。しかし事業側では、「新しい顧客を獲得したい」という目的があり、そのために広告費が必要になっています。

会計だけ、マーケティングだけ、システムだけを見ても、会社全体の最適解には届きません。

FDEが本当に成果を出すには、会社全体を俯瞰し、複数領域をつなげて考える必要があります。大企業でも、強いプロダクトや専門チーム、十分なドメイン知識があればFDEは成立します。一方、BLP型FDEは、外部から会社全体を俯瞰し、業務発見から実装までを少人数でつなぐモデルです。そのため、経営者と直接話し、業務全体を見渡しやすい中小企業の方が、アウトカムにつながりやすいケースが多いと考えています。

まとめ:AXは変革、FDEはそのための実装手段になり得る

AXとFDEは、競合する概念ではありません。

AXはAIを前提とした変革の方向性。FDEは顧客の現場に入り、業務・データ・システムをつなぎ、必要なものを実装する役割です。

個人的には、まず目的を決め、その目的に必要な情報と業務をつなぐことが重要です。その実装をFDEが担い、AIを前提に業務や組織を大きく再設計する必要がある場合には、FDEがAXを実現する手段の一つになる。そう捉えるのが自然だと考えています。

FDEそのものについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。DXとAXの違いについては、別の記事で目的とアウトカムの観点から整理しています。

AXとDXの違いとは?「AIかデジタルか」より、目的とアウトカムが重要だと考える理由 →

FDEとは?Forward Deployed Engineerの役割と、なぜ「誰でもFDE」は難しいのか →

FDEとAXに関するよくある質問

FDEとAXは同じものですか?

同じではありません。AXはAIによる企業変革の方向性として使われる言葉で、FDEは顧客の課題発見から実装までを担う役割・アプローチです。

FDEを導入すればAXになりますか?

必ずしもそうではありません。FDEが既存業務を改善するだけで十分なケースもあります。AIを前提に業務や組織そのものを再設計する必要がある場合に、AXへつながると考えられます。

FDEは中小企業にも向いていますか?

FDE一般が中小企業向けという意味ではありません。BLP型FDEでは、経営者との距離が近く、会社全体の業務を俯瞰しやすい中小企業の方が、複数領域をつないだ実装を行いやすく、相性が良いケースが多いと考えています。


参考:
日立製作所 – FDE Team / AXに関する事業戦略資料
日立製作所 – OpenAIとのFDE連携とAX